2016年1月5日火曜日

殺人犯はそこにいる


 噂に違わぬ傑作。

 1979年~1996年に栃木と群馬でおきた女児の連続殺人事件を追ったノンフィクション。作者は「桶川ストーカー事件」の取材で名を上げた日本テレビの伝説の記者で、上記の事件への取材と報道を重ね、2010年の”足利事件”の冤罪の認定(無罪の確定)への道筋をつけた実績の持ち主。

 作者の執念で事件の真実に迫っていく過程にグイグイ引き込まれるが、書いてあることが全て事実であるということを考えるにつけ、胸に重くのしかかるものがある。都合の悪いものを組織ぐるみで隠蔽して黙殺し、時には証拠を捏造して無実の人を陥れる警察や司法などの国家権力の力学が描き出される。本書を手に取った栃木県警や科警研の人はどのような心境に至るんだろうか。

 これぞジャーナリズム、という面目躍如ともいえる腐敗した権力構造の告発。一人でも多くの人に読んでほしい。 
   

2 件のコメント:

  1. 人間の歴史には黒の章が現在進行形で生まれ続けているという事実を、いつ子供に教えるべきかをよく考えたりする。
    自分自身もっと見たり聞いたりしなければならないと思いつつ、体力とこころに相当ゆとりがなければ厳しいので保留中。

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  2. 直接的な言葉で親から子に語り伝えるのは難しく、その代わりに人類が用いてきた手段として、このブログで紹介しているような物語作品があるのだと私は考えています。人間の悪を描く物語は、免疫を作るための予防接種みたいなものなのです。

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