2017年10月20日金曜日

スラムドッグ$ミリオネア


 5年ぶりくらいに観直した2008年作品。

 インドのスラム街育ちの無学な青年が、高額賞金が出るテレビのクイズ番組(日本でもやっていたクイズミリオネア)で何故、勝ち上がることができたのか…。主人公ジャマールの回想とともにその謎が明かになる。

 観ていて胸が苦しくなるほどのインドの不衛生と暴力が描かれる。おぞましいほどの汚さや残虐さとポップな疾走感の組合せが"Trainspotting"にも通じるダニー・ボイル節。残酷で汚穢に満ちた世界の中で、綺麗な心を持ち続ける人間の美しさが際立つ。暴力に生きざるを得なかった兄サリーム、慈愛と慎みに満ちた心優しい主人公ジャマール、そして、理不尽に傷つけ貶められる美しいヒロイン、ラティカ。熱気と人間の業(カルマ)が渦巻くインドの混沌の中で、彼らは必死に生きていく。

 そして、最後まで観た時に、不思議な気持ちで映画のストーリーの意味を考えさせられてしまう作品だと思うが、隠れたもう一つのテーマはユング心理学でいう布置(constellation)にある。一見関係のない、乱雑に配置されていた一つ一つの要素が実は意味を持っていて…という視点は大変ナラティブで味わい深い視点なので、本作の鑑賞を通してぜひ堪能していただきたい。

 そんな含蓄に富んだ、猥雑で不条理な世界に光るロマンスの物語である。素晴らしい。
 

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